1. なぜ DeepSeek でルール分流が効くのか
生成 AI のフロントエンドは、単一の HTML ページでは完結しません。初期表示の静的資産、認証とセッション維持の API、ストリーミング応答用の別ホスト、分析や CDN への副次リクエストなど、複数のホスト名に接続が分岐します。Clash の ルール分流は、これらをまとめて PROXY 側の出口に載せるか、意図的に DIRECT に残すかを、ホスト単位で制御する仕組みです。
DeepSeek の場合も同様で、ブラウザで deepseek.com を開いていても、背後では chat. や api.、場合によってはダッシュボード用の platform. など、サブドメインが増えたり公式がインフラを更新したりするため、古いルールセットのままでは「メインだけ通ってサブが直結している」状態が起き得ます。その結果、画面の一部だけ読み込みが終わらない、API だけ別経路でブロックされる、といった部分的不通に見えます。
前提として、本稿は違法な迂回や利用規約に反する行為を推奨するものではありません。契約プランとポリシーの範囲内で、自宅や開発環境のネットワークを整えるための一般的な話に限定します。
2. Grok/OpenAI 系記事との関係(シリーズ感)
当サイトでは、ベンダーごとにホスト名が異なることを前提に、Grok/xAI 向けのルール分流や、ChatGPT/OpenAI 向けの記事を掲載しています。考え方の骨格は共通で、① 実際のログに出た Server Name を正とする ② DOMAIN-SUFFIX などでまとめて PROXY に寄せる ③ ノードと DNS をセットで疑う、の三段です。
DeepSeek はドメイン空間が OpenAI や xAI と完全には一致しないため、ルールをそのまま流用しても API だけ漏れる、ということが起きます。したがって本稿では deepseek.com 系にフォーカスした短い追記ルールを例示し、既存の汎用 AI ルールと併用する運用を想定します。クライアントの選び方は Windows 向けクライアント比較も参照してください。
3. Web と API で障害が分かれる理由
ブラウザでチャット UI を使うときは、まずフロントの JS/CSS/画像が取得され、その後に認可トークンや会話 API が走ります。ここで一つでも DIRECT のまま地理制限や輻輳にさらされるホストがあると、見た目は「ずっとスピナー」のまま止まります。
対して API(curl、Python SDK、CI からの呼び出し)は、User-Agent も TLS の握手指紋もブラウザとは異なり、企業プロキシやセキュリティ製品の扱いも別物です。「Web は開けるが API だけ 403/タイムアウト」は、ルールより認証ヘッダやレート制限の可能性もありますが、まずは 同じノード・同じ DNS に揃えて再現するかを切り分けると早いです。
HTTPS_PROXY などを本機の mixed-port に合わせてから、ルールの話に進むと手戻りが減ります。
4. ドメインとエンドポイントの整理
公式の構成は更新されるため、以下は設定時の思考のための例です。必ずクライアントの接続ログに出るホスト名を正として追記・削除してください。
- ブランド/ポータル:
deepseek.com本体やドキュメント、ステータス案内など。 - チャット UI:
chat.deepseek.comなど、対話画面を配信するホスト。分割読み込みで追加サブドメインが出る場合があります。 - API:多くの連携例では
api.deepseek.comをベースに、OpenAI 互換の/v1/chat/completions等へ POST します(実際のパスと認証方式は公式ドキュメント優先)。 - 開発者向けコンソール:キー発行や利用量確認が
platform.deepseek.comなど別ホストにある場合、そこもまとめて PROXY に載せないと「キーはあるのに管理画面だけ開かない」が起きます。
ログの見方
GUI クライアントのログでは、各接続について マッチしたルールと実際に使われたノードが並びます。期待と違うときは、rules: が上から順に評価されることを思い出し、より汎用な RULE-SET や国別ルールが、後から足した DeepSeek 用ルールより上で吸っていないかを確認します。
5. Clash でのルール分流(コピー用例)
Clash(Mihomo/Meta 系コア)では rules: に DOMAIN、DOMAIN-SUFFIX、外部 RULE-SET を並べ、最後に MATCH でデフォルトへ落とします。DeepSeek 向けに最小限だけ足すなら、サフィックス単位が扱いやすいです。
# Example only — verify hostnames in your client logs
rules:
- DOMAIN-SUFFIX,deepseek.com,PROXY
- DOMAIN-SUFFIX,deepseek.io,PROXY
- MATCH,DIRECT
deepseek.io は将来のリダイレクトや CDN で使われる場合があるため、ログに出たら残し、出なければ削除して構いません。DOMAIN-KEYWORD,deepseek のような広い書き方は他サービスと衝突しやすいので、可能なら避けます。購読ルールとマージするときは、競合する上位ルールに負けていないかを必ず確認してください。
用語や全体像は ドキュメント概要も併せて参照すると、プロファイルの責務分けが整理しやすくなります。
6. ノード選択と安定性
ノード選択は ping が低いものを選べばよい、という話だけではありません。TLS の往復、輻輳、BGP の揺らぎ、プロバイダ側のレート制限まで含めると、「速いが不安定」と「やや遅いが落ちにくい」が入れ替わることがあります。
実務的には、同一プロファイル内で複数ノードを順に試し、チャット画面を開いたままストリーミングの途切れ方が変わるかを見ます。API 利用では、アプリ側に短いリトライと指数バックオフを入れておくと一時混雑に強くなります(実装はアプリの責務ですが、ネットワーク側の揺らぎを吸収できます)。
フォールバックグループの扱い
自動フェイルオーバー系のグループを使う場合、閾値が甘いとノードが頻繁に泳ぎ、対話 UI ではストレスになります。まずは手動で安定ノードを固定し、問題が再現しないことを確認してから自動化を検討するのが無難です。
| 症状 | ありがちな原因 | 先に試すこと |
|---|---|---|
| 最初だけ速いがすぐ止まる | 輻輳・レート制限 | 別ノード、時間帯変更、再試行 |
| ブラウザのみ SSL エラー | ローカル証明書/HTTPS 検査 | セキュリティ製品の設定を確認 |
| ルールは PROXY だが遅い | 実ノードが遠い/混雑 | 低遅延ノードへ変更 |
| 名前解決だけ失敗 | DNS の漏れ・汚染 | dns 設定と fake-ip の整合 |
7. DNS・Fake-IP・ターミナル
Clash 利用者がつまずきやすいのが DNS です。Fake-IP を使う構成では、名前解決とルール評価のタイミングが密接に絡み、「ログ上のホストとブラウザの表示が噛み合わない」ように見えることがあります。大方のケースでは、漏れない DNS と ルールと矛盾しない解決経路が揃えば安定します。
詳細なキー名はコアのバージョンで差があるため、ここでは方針のみ述べますが、「DNS だけが意図せず直進している」状態は、ルールを直しても体感が改善しない典型です。fake-ip と DNS の切り分け記事で、仮想 IP 周りを疑う手順もあわせて確認してください。
IPv6 が別経路に出ているケースでは、OS やルータで IPv4 を優先するだけで挙動が変わることもあります。長時間のバッチ処理では、接続の再利用やキープアライブの設定も、アプリ側とネットワーク側の両方から見る価値があります。
8. 簡易セルフチェック
上から順に試すと無駄が少ないチェックリストです。
- クライアントの更新:古い GUI はコア挙動とずれます。公式ダウンロードページから現行版へ。
- システムプロキシと TUN:トラフィックをどちらに載せているか統一し、例外アプリがないか確認。
- ルールのヒット:ログで DeepSeek 関連ホストが期待のポリシーに乗っているか。
- ノードの健全性:別ノードへ切り替えて再現性を確認。
- DNS:解決経路と fake-ip の整合。
- API 認証:キー期限・課金状態・エンドポイント URL の打ち間違い(ルール以前の切り分け)。
これでも改善しない場合は、プロバイダ側の障害や地域的制限の可能性が高まります。ステータス情報と時間を置いた再試行も現実的な対処です。
9. まとめ
DeepSeek のように Web と API の両方から使うサービスほど、通信は単一ホストに収まらず、ルール分流の設計ミスが「読み込みの止まり」や「API だけの失敗」として現れます。deepseek.com 系をログで正にし、Clash で DOMAIN-SUFFIX などを丁寧に積み上げ、ノード選択と DNS をセットで見直すと体感はかなり落ち着きます。
同種のプロキシツールと比べて、Clash 系はログとルールの見え方が明瞭な場合が多く、試行錯誤のコストを下げられます。ルールを少し整えただけで、長い会話や夜間バッチが途切れにくくなることも珍しくありません。